鬱病と診断された日
私は精神科に行き、「鬱病」と診断された事がある。
当時20歳の私は、夜の街を徘徊するチンピラ、今でいう半グレだった。
しかし、ナメられたら終わりが通じるのは10代だけ。
同級生が進学や就職をして頑張っている中、ぬぐえない劣等感。
スクールカーストの頂点だと思っていた自分は、高校を出たら単なる無職で、社会のピラミッドでは最下層だと気づいてしまった。
自分は何をやっているのか、どうしてこうなったと自問自答を続けた結果、ある日突然、心が思考を放棄した瞬間を感じた。
「あ、ダメだ・・・。」
途端に体がズシっと重くなり、動けないというか、動きたくなくなった。
人と関わる事を拒み、家からほとんど出れなくなってしまった。
当時の私は甘えているだけで、社会的責任も無ければプレッシャーもない。
しかしその時は、自分は何か計り知れないプレッシャーを感じすぎて心が病んでしまったんだろうと思う事にした。
心の病気だから仕方ないんだ。
そう思い、鬱病の診断が欲しくて心のカウンセラーと話をする事にした。
とにかく自分は人よりつらいんだと訴える、何もない、甘えてるだけのクズ男に対し、カウンセラーは否定もせず、「うん、うん」と話をきき、最後にこう言った。
「鬱ですね。1人で抱えて、つらかったね。」
本当に鬱病の人は、わかってもらえた事、共感してくれた事に嬉し涙を流すらしい。
しかし私はこう思った。口に出して言ったかもしれない。
「テメェに何がわかんだこのハゲ!」
マニュアル通りに寄り添っておけばいいと思ってんのか。
お前が理解できるような浅い次元で悩んでねぇんだよこっちは。
ヒネクレて謙虚さも無かった私は、カウンセラーの理解に対して怒りをぶつけたのだ。
鬱病と診断されたその日、久しぶりにずっとオフだった携帯の電源を入れた。
「生きてるか?」というメールが届き続けた。
死亡説が流れていたようで、一件一件に「大丈夫」と返信し、次の日から外に出るようになった。
今になって思うと心の病でもなんでもなく、単なる甘えだったと思う。
鬱病と診断され、その日に鬱を克服した話。